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BPO業界のM&Aスキームとは?株式譲渡・事業譲渡・会社分割の違いと選び方をわかりやすく解説

2026 5/25
BPO業界のM&A
2026年4月20日2026年5月25日
M&Aスキームの違いと選び方 株式譲渡・事業譲渡・会社分割を徹底比較 アイキャッチ画像

BPO業界のM&Aを成功させるうえで、最も重要な意思決定の一つが「どのスキーム(手法)で取引を行うか」です。株式譲渡・事業譲渡・会社分割の3つが代表的なスキームですが、それぞれ手続き・税務・リスクの範囲が大きく異なります。本記事では、BPO企業の経営者がM&Aスキームを正しく理解し、自社に最適な方法を選べるよう、各手法の仕組み・メリット・デメリット・選び方のポイントをわかりやすく解説します。

目次

M&Aスキームとは?基本的な考え方

M&Aスキームとは、企業の合併・買収を実行する際に用いる具体的な取引手法のことです。M&Aと一口に言っても、「会社ごと売る」のか「事業の一部だけを切り出して売る」のかによって、採用すべきスキームは異なります。

M&Aのスキームは大きく分けると、「法人(会社全体)」を対象とするものと、「事業(会社の一部)」を対象とするものに分類できます。法人を対象とする代表的な手法が株式譲渡であり、事業を対象とする手法には事業譲渡と会社分割があります。

BPO業界では、コールセンター事業・バックオフィス事業・IT運用保守事業など複数の事業を展開する企業が多く、「どの事業を売却するのか」「会社丸ごと譲渡するのか」によってスキームの選択が変わってきます。

株式譲渡とは?最もシンプルなM&Aスキーム

株式譲渡の仕組み

株式譲渡とは、譲渡企業の株主が保有する株式を譲受企業に譲渡することで、会社の経営権を移転するスキームです。会社そのものは存続し、法人格・契約関係・従業員の雇用もそのまま引き継がれるため、最もシンプルで手続き負担が少ない手法とされています。

中小企業のM&Aでは、株式譲渡が全体の約7〜8割を占めるとされており(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」2024年改訂版)、BPO業界でも最も多く採用されているスキームです。

株式譲渡のメリット

手続きが簡便:株式の売買契約を締結し、株主名簿を書き換えるだけで基本的な手続きが完了します。取引先や従業員との個別の契約移転手続きは原則不要です。

事業への影響が少ない:会社の法人格がそのまま存続するため、BPOの委託契約やSLA(サービスレベル合意)、従業員の雇用関係もそのまま維持されます。クライアント企業への影響を最小限に抑えられる点は、BPO業界において特に重要なメリットです。

譲渡企業の税務メリット:個人株主の場合、譲渡益に対して所得税・住民税あわせて約20.315%の分離課税が適用されます。法人税率と比較して税負担が軽い場合が多いのが特徴です。

株式譲渡のデメリット

簿外債務のリスク:会社を包括的に譲り受けるため、貸借対照表に載っていない偶発債務(未払残業代、訴訟リスク、退職給付債務など)も引き継いでしまうリスクがあります。BPO企業の場合、派遣法違反や個人情報漏えいに関する潜在リスクが問題になるケースもあるため、デューデリジェンスが特に重要です。

不要な資産・負債も含まれる:特定の事業だけを取得したい譲受企業にとっては、不要な事業や資産まで引き継ぐことになり、効率的でない場合があります。

事業譲渡とは?必要な事業だけを選んで取引するスキーム

事業譲渡の仕組み

事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を、個別の資産・負債・契約として譲受企業に譲渡する手法です。株式譲渡とは異なり、譲渡対象を細かく選別できるため、「コールセンター事業だけを売りたい」「バックオフィス事業は残したい」といったニーズに対応できます。

事業譲渡のメリット

譲渡対象を限定できる:売りたい事業・資産・契約だけを選んで譲渡できるため、譲受企業にとっては不要な資産やリスクを引き継がずに済みます。BPO企業が複数のサービスラインを持っている場合、特定のセグメントだけを切り出して売却するケースに適しています。

偶発債務のリスクを遮断できる:譲渡対象を個別に特定するため、簿外債務や偶発債務を引き継ぐリスクを大幅に低減できます。譲受企業にとっては安心感のあるスキームです。

事業譲渡のデメリット

手続きが煩雑:取引先との契約、従業員の雇用契約、許認可などを個別に移転する手続きが必要です。BPO企業の場合、数十社〜数百社のクライアントとの業務委託契約を一つひとつ移転しなければならないため、手続きの負担が大きくなる傾向があります。

従業員の個別同意が必要:事業譲渡では、従業員の雇用契約は自動的には移転しません。一人ひとりの同意を取得する必要があり、キーパーソンの離職リスクが生じます。BPO業界では人材が最大の資産であるため、この点は特に注意が必要です。

消費税が課される:事業譲渡は資産の売買として扱われるため、課税資産(設備、ソフトウェア、のれん等)に対して消費税(10%)が課されます。取引規模が大きい場合、消費税の負担も無視できません。

会社分割とは?組織再編として事業を移転するスキーム

会社分割の仕組み

会社分割とは、会社法上の「組織再編行為」に該当する手法で、会社の事業に関する権利義務の全部または一部を他の会社に包括的に承継させる仕組みです。事業譲渡と同様に事業の一部を切り出せますが、法的な位置づけが大きく異なります。

会社分割には、既存の会社に事業を承継させる「吸収分割」と、新たに設立する会社に事業を承継させる「新設分割」の2種類があります。

会社分割のメリット

契約が包括的に承継される:事業譲渡とは異なり、分割対象の事業に関する取引先との契約は原則として譲受企業にそのまま承継されます。クライアントとの業務委託契約が多数あるBPO企業にとって、個別の移転手続きが不要になるのは大きなメリットです。

消費税が非課税:会社分割は組織再編行為であるため、消費税は課されません。高額な取引においては、事業譲渡と比べて大きなコスト削減効果があります。

株式を対価にできる:現金がなくても、譲受企業企業の株式を対価として分割を実施できるため、資金調達の負担が軽減されます。

会社分割のデメリット

手続きが複雑:会社法に基づく組織再編手続き(分割計画書の作成、債権者保護手続き、株主総会特別決議など)が必要であり、手続きの期間とコストが事業譲渡よりも長くかかる傾向があります。

債務も包括的に承継される:分割対象事業に含まれる債務は包括的に承継されるため、株式譲渡と同様に、偶発債務の引き継ぎリスクがあります。

労働者保護手続きが必要:会社分割では「労働契約承継法」に基づき、対象となる従業員への事前通知・協議が必要です。手続きに不備があると、分割自体の有効性が争われるリスクもあります。

BPO業界におけるスキーム選択の3つのポイント

ポイント1:譲渡対象の範囲で選ぶ

会社全体を売却するのであれば株式譲渡が最もシンプルです。一方、複数事業のうち特定のセグメント(例:コールセンター事業のみ、IT運用保守事業のみ)を売却する場合は、事業譲渡または会社分割を検討します。

ポイント2:クライアント契約の数と移転負担で選ぶ

BPO企業は多数のクライアントとの業務委託契約を抱えていることが一般的です。契約数が多い場合、個別の移転手続きが必要な事業譲渡よりも、契約が包括承継される会社分割や株式譲渡のほうが現実的な選択肢となります。

ポイント3:税務コストと手続き負担のバランスで選ぶ

譲渡企業が個人株主の場合、約20.315%の分離課税で済む株式譲渡は税務面で有利です。一方、法人が譲渡企業の場合は、事業譲渡でも会社分割でも法人税が課されるため、消費税の有無(事業譲渡は課税、会社分割は非課税)や手続き負担を総合的に比較して判断する必要があります。

3つのスキームの比較まとめ

比較項目 株式譲渡 事業譲渡 会社分割
譲渡対象 会社全体 事業の全部または一部 事業の全部または一部
契約の承継 自動的に承継 個別移転が必要 包括的に承継
従業員の移転 自動的に承継 個別同意が必要 労働契約承継法に基づく手続き
簿外債務リスク あり(包括承継) 低い(個別選択) あり(包括承継)
消費税 非課税 課税(10%) 非課税
手続きの簡便さ ◎ 簡便 △ 煩雑 △ 複雑
BPOでの活用場面 会社丸ごと売却 特定事業の切り出し 契約数が多い事業の切り出し

まとめ

BPO業界のM&Aでは、株式譲渡・事業譲渡・会社分割の3つのスキームが主に使われます。会社全体を売却するなら手続きが簡便な株式譲渡、特定事業だけを切り出すなら事業譲渡か会社分割が適しています。特にBPO企業はクライアントとの業務委託契約が多数あるため、契約の承継方法がスキーム選択の重要な判断材料になります。

一文で言うと:BPO業界のM&Aスキーム選択は「何を売るか」「契約移転の負担」「税務コスト」の3つの軸で判断するのが基本です。

M&Aのスキーム選択は、税務・法務・事業運営の多方面にわたる専門知識が求められます。BPO企業の売却・譲渡をご検討中の経営者様は、BPO業界に特化した専門アドバイザーにご相談ください。

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著者:株式会社M&A Do 代表取締役 濱田啓揮
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この記事を書いた人

株式会社M&A Do 代表取締役 濱田啓揮のアバター 株式会社M&A Do 代表取締役 濱田啓揮

東京都昭島市出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、大手M&A仲介会社にて勤務し、その後株式会社M&A Doを立ち上げ。工事業のM&Aを過去多数支援。

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